1990年代にレバーレス攻略っぽい何かをしてた話(格闘ゲームのスコアアタック黎明期)

はじめまして。Clover-TACさんからバトンを受け取りました。「やちょ」と申します。格闘ゲームのスコアアタックを中心に活動しております。少し大げさな見出しになってしまいましたが、初期のCPU戦におけるスコアアタック攻略に関する話や操作系のカスタマイズに関する話を書いていきます。

読者の皆さんの中には、「格闘ゲームにスコアってあったっけ?」と思われる方もいるかもしれません。その背景も含めて昔話(2分程度)から始めたいと思います。昔話に興味のない方は、直接テクニック編からお読みください。

スト2リリース前夜

自分がスコアラーを始めたのは1990年頃で、クラックス(アタリ)、コラムス(セガ)などが全国トップを獲得できたタイトルです。自分がホームにしていた福岡のモンキハウス本館というゲームセンターではその頃、毎週のようにアーケードゲームがリリースされており、ジャンルを絞らず手当たり次第新作ゲームを楽しんでいました。

ある時、東京遠征時に、同じタイトルのスコアアタックをしている先輩のスコアラー、(故)RVS-GUNさんと話す機会がありました。人格的にも素晴らしい方で、そのゲームにおいてはライバル関係でしたが、攻略情報を惜しみなく教えてくださいました。また、「自分は心から楽しいと思っているゲームをやるようにしている」と言った趣旨の事を仰っていて、懐の深さと合わせて今でも私の物事への取り組みに影響を与えています。この出来事が私の心の中に火をつけ、以前以上にスコアラー活動に没頭していきました。

スト2リリース

そんな中、1991年にストリートファイター2がリリースされました。非常に先進的なゲームで、対戦プレイの奥深さが組み込まれていました。しかし、当時のプレーヤーたちはまだ対人対戦に馴染んでいなかったため、ほとんどの人がCPU戦を楽しんでいました。一人用としても非常に奥深いゲームだったことも手伝って、地元ではゲーメストに対戦プレイの攻略記事が出るまで数ヶ月間、一人で遊ぶ人が多かったと記憶しています。

自分としては、対戦が流行る前にすっかりスコア狙いの遊び方にハマってしまいました。それが楽しすぎて何十年も経った今も、いまだにそのスタイルの遊び方を続けているというわけです。ただ、福岡は対面対戦台の導入が早くて(あるオペレーターさんが東京遠征をした時に通信対戦台の情報を下井草周辺のゲーセンの方から教わって、いち早くの導入に成功したため)、対人対戦が爆発的に盛り上がっていたのもあって、対人戦も嗜んでおりました。

インターネットが一般に普及していない時代(まだIIJもない頃)、各地方都市(東京、関西、九州含む)で別々のテクニックが開発され、実際に会って情報交換するなどという事も行われていました。その時の方々に感謝申し上げます。アナログな情報伝搬でしたが、今振り返るとゲーム攻略が一番面白かった時代の一つかもしれません。

攻略スタイル

自分の攻略スタイルはやや特殊で、連射装置や特殊なボタンなどの装置をフルに活用する方向性を採っていました。認知負荷を下げることにより、ゲームプレイの試行回数を増やしても疲れによるミスが増えないようにするためです。当時のゲームは先行入力のシステムがなかったので連射装置を利用して最速目押しに相当する動きを実現するなどしてしました。

例えば、敵のブランカが自発的にローリングアタックを2回連続でやってくる時に、一発目をガードした後に最速で中パンチを空振りしてから最速アッパーを出すと二発目のローリングと必ず相打ちになるといった具合です。

他には、レバー下ボタンを別途割り当てて、左下から右下入力(ニュートラルを通さない)の補助に使ったり、ピヨり回復や掴み技のレバガチャ用にレバーの左右の連射ボタンを設定したりしていました。

30年以上経った昨今では、フレーム埋め、レバーレスコントローラー、しゃがみ必殺技(しゃがみ昇龍拳など)といった形で、当時と同じようなアプローチが別の方面から開発されているのは個人的に興味深いと思っています。

「連射装置とかチートなのでは?」と思った方もいるかもしれません。競争のためのルールは団体によって色々あると思いますが、自分は日本ハイスコア協会(JHA)様の公式ルールに従ってスコアアタックを行っています。

スト2以降も40部門くらい。色々な格闘ゲームやキャラクターのスコアアタック攻略をしてきましたが、ここではストリートファイター2(初代)のブランカに絞って具体的にどんなことをしていたかの一端を紹介していきます。細かすぎて伝わらなかったらゴメンナサイ!

テクニック編

紙面の都合上、主に電撃にまつわるものを中心に取り上げていきます。

ダブルKO

1人の敵あたり最大10ラウンド戦う事が出来る。このため狙ってダブルKOをして戦うラウンド数を増やす事が得点アップにつながる。敵は11人出てくるので1コインで最大110ラウンド戦える。各ラウンドのスコアタ成功率が95%程度の場合でも、全面成功させる確率は(0.95)^110で0.35%となり、まぁまぁ絶望的なため、いかに各ラウンドの成功率を高めるかが記録を出すためのポイントになる。

技の点効率

技を敵に当て際の 得点/与えるダメージ 。ダブルKOのラウンドで点効率が高い技を出来るだけ多く当てることが得点アップにつながる。

黒電撃

ブランカの必殺技であるエレクトリックサンダー(電撃)のヒットストップ時にブランカが黒く表示される電撃。黄色い表示時は黄電撃。強の黒電撃はブランカ最高配点の1500点、黄電撃は1000点。電撃の出始めのフレームでは黄色で、以降黒→黄→黒→黄…と交互に遷移する。黒電撃は点効率がブランカの技の中で一番高い。

しゃがみローリング

左下溜めから右下レバー+パンチという入力で出すローリングアタック。ブランカのしゃがみ姿勢は喰らい判定が非常に低いため、敵の飛び蹴りをギリギリまで引きつけて迎撃出来るという特徴がある。ローリングが出たフレームにて喰らい判定と攻撃判定が同時に上方向に大きく拡がるため、相打ちに利用できる。

活用していた装置

シンクロ連射装置

ゲーム機から出力される垂直同期信号(VSYNC信号)を利用して、ボタンの入力信号をフレームに同期してon→ off→on→ off…と切り替えることができる連射装置。シンクロ連射は、ゲームが認識できる最高速の連射(秒間30連射)ができるという利点がある。当時は東京の競合店の方から教わったり、ある雑誌(バックアップ活用テクニックだったかと思います)に載っていた回路図を元に自分でハンダづけをして制作しておりました。

表連ボタン、裏連ボタン

ゲーム開始からの奇数フレームonになる連射ボタン(表連)と偶数フレームでonになる連射ボタン(裏連)。ブランカの攻略では黒電撃と黄電撃の当てわけに利用できる。

レバー下ボタン、レバー左右連射ボタン

前述。

電撃の当て方 Tips

ダルシム

ピヨらせた後の黒電撃確定:飛び蹴りからの3段でピヨらせる際に3段目を表連で出す。その技を出したフレームから、ピヨり状態で敵が起き上がるまでのフレーム数は一定である。このとき起き上がりに重ねる電撃を表連射で出すが裏で出すか使い分けることにより、黒、黄どちらが起き上がりに重なるかをコントロールできる。

例:飛び蹴り中パンしゃがみ強パンチ(表)後に、裏連射ボタンで強電撃を重ねると黒電撃確定。(ピヨらせた瞬間から電撃を当てるまでのフレーム数が奇数で固定されるため。)

リュウ、ケン

起き上がりにギリギリ当たらない距離に強電撃を出していると敵は一定時間我慢したあとに波動拳を打とうとして喰らってくれる。我慢するフレーム数が一定であるため、裏表のボタンを使い分ける事で黒電撃を確定で当てる事が出来る。

春麗、本田、バイソン

敵の飛び込みへの電撃確定:春麗は電撃を見るとジャンプ大キックで返そうとしてくる。が、強の電撃の攻撃判定に一方的に打ち負けて電撃を喰らってくれる。敵に画面端を背負わせると、本田、バイソン相手でも可能。

黒電撃を確定で当てる:電撃を連打で継続する際に奇数フレームでは弱パンチ、偶数フレームでは強パンチのボタンで連打をすることにより電撃の強度がフレーム毎に弱(黄)強(黒)弱(黄)強(黒)と交互になる。黒電撃は強なので攻撃判定が大きく、黄電撃は弱で攻撃判定は小さくなる。この判定の大きさの差をdとする。敵がジャンプや歩きなどで移動してきて電撃に当たる際、1Fあたりの移動距離がd以下の場合、必ず強(黒)電撃がヒットする。高速で膨らんだり萎む風船に対してゆっくり指を動かして触れると、必ず膨らんだときに接触する光景をイメージすると理解が進むかもしれません。

ボーナスステージ(車破壊)

前むきの強電撃がギリギリ当たる(後ろ向き電撃が当たらない)距離で電撃を出し、奇数(黄)フレームのみ後ろを向くことにより黒電撃を多めに当てる事が出来る。

ガイル

電撃相打ち: ガイルの体力が2%以下になると、ガイルが歩いてきて二回転足払いを多用するようになる。この時一回転目を垂直ジャンプでかわして二回転目に電撃で相打ち出来る。

本田

電撃相打ち:まず、電撃を見せて、敵に飛び蹴り足払いシーケンスを予約させる。バックジャンプで飛び蹴りを空振りさせ、敵の足払いと自分の2回目の電撃で相打ちが出来る。何を言っているのか分かりづらいと思うので、そのうち動画を公開するかもしれません。

終わりに

駆け足になってしまいましたが、格闘ゲームのマニアックな楽しみ方の一つの紹介でした。皆様、それぞれのやり方でゲームを楽しんだら素敵だなと思いつつ次の人にバトンを渡したいと思います。また、ゲームの攻略の過程で様々な情報を教えてくださった方々に感謝いたします。

次は、ゲーメストライター時代の繋がりで、きらり屋さんにお願いしたいと思います。